SPI 非言語の「苦手」を潰す定石 ── 推論以外の頻出5分野
SPI の非言語対策というと、多くの就活生はまず推論を思い浮かべる。条件が散らばり、真偽を詰めていく推論は確かに手強い。だが非言語の失点は、むしろ推論以外の地味な分野で静かに積み上がることが多い。損益算・仕事算・速度算・確率・集合──中学や高校で一度は触れたはずの分野が、数年のブランクを経て「解けるはずなのに手が遠のく」苦手として残る。
推論の5局面(順序・対応・嘘つき・位置・グループ分け)については、別稿SPI 推論の頻出形を5局面に分類するで手筋を整理した。本稿ではそこに深入りせず、推論以外の頻出5分野に盤面を絞る。苦手がどこで生まれるのか、分野ごとにどの定石を当てるのか、そして苦手を得点源へ変える反復の型までを一段掘り下げる。
目次
非言語が「苦手」になる理由
非言語が苦手になる理由は、大きく三つに整理できる。第一に、対策の意識が推論に偏りやすいことである。推論は見るからに難しく、対策本でも紙幅が割かれるため、損益算や速度算のような計算分野が「簡単なもの」として後回しにされる。ところが本番で足を引くのは、この後回しにした分野であることが少なくない。
第二に、ブランクである。損益算や仕事算の考え方は中学受験・高校入試で扱った内容と重なる部分が多いが、就活期には数年のブランクが空いている。公式そのものは思い出せても、原価を100と置くといった計算を軽くする手筋を忘れていると、1問に余計な時間がかかる。
第三に、時間圧である。SPI は1問あたりに使える時間が短い傾向があり、解法の型を思い出しながら解いていては間に合わない。つまり非言語の苦手の正体は「知らない」ではなく、「型を思い出すのに時間がかかる」ことが多い。であれば、対策の方向は反復で型を体に戻すことに定まる。
推論以外の頻出5分野
推論以外で出題されやすいのは、次の5分野である。いずれも局面の見た目は違うが、当てる定石は分野ごとに決まっている。
損益算・割合は、原価・定価・売価・利益率の関係を扱う分野である。値引き・割増、歩合や百分率といった割合の設問全般もここに含まれる。パーセントの往復計算で桁や向きを見失いやすい局面だ。
仕事算は、複数の人や機械で一つの仕事を分担したときの所要時間を求める分野である。「AとBが一緒にやると何日で終わるか」という形が典型で、分数の扱いで手が止まりやすい。
速度算(速さ・距離・時間)は、旅人算・通過算・流水算などの派生を含む分野である。単位の取り違えと、出会い・追いつきの状況整理でつまずく局面が多い。
確率は、順列・組合せを土台に事象の起こりやすさを求める分野である。場合の数の数え方を最初に間違えると、その先がすべて崩れる。
集合(ベン図)は、二つ三つの集合の重なりを整理し、該当する人数などを求める分野である。重なりを二重に数える誤りが起きやすい。
分野ごとの定石手筋
分野が分かれば、当てる手筋は決まっている。局面ごとに初手を一つずつ持っておけば、迷いが消える。
損益算は、原価を100(または1)と置くのが定石である。具体的な金額が示されていなくても、原価を基準の100として定価・売価を追えば、パーセントの往復が一方向の掛け算に整理される。たとえば「原価に2割の利益を見込んで定価をつけ、その定価を1割引いて売った」という設問なら、原価100→定価120→売価108とたどるだけで、原価に対する利益が8だと一目で出る。金額を文字で置いて連立を組むより、基準を100に固定する方が速い。「利益率」が原価に対する割合か売価に対する割合かは、設問ごとに最初に確認しておく。
仕事算は、全体の仕事量を1と置く。各自が1日にこなす仕事量を分数で出し、それを足し合わせれば所要時間が求まる。分数が煩雑になりそうなときは、日数の最小公倍数を全体量に取り直すと計算が軽くなる。「Aは6日、Bは3日で終える仕事」なら、全体量を6と置けば1日あたりA=1・B=2となり、二人で1日3、つまり2日で終わると暗算に近い速さで出せる。
速度算は、単位を先に揃えるのが初手である。分速と時速、メートルとキロメートルが混在した設問は、盤面に乗せる前に単位を統一する。出会い・追いつきの問題は、線分図やダイヤグラムで位置関係を可視化すると、立式で迷わない。速さ・距離・時間の三つのうち二つが分かれば残り一つは決まるという関係を、図の上で確認する癖をつけておく。
確率は、順列(並び順に意味がある)と組合せ(選ぶだけ)の区別を最初に決める。ここが曖昧なまま進むと土台から崩れる。「少なくとも1つ」を問う設問は、余事象を求めて全体の1から引く手筋を型として持っておくと速い。
集合は、二つの集合ならベン図、属性が2軸に分かれるなら2×2の表を引く。いずれの場合も、包除原理(重なりを一度だけ引く)を式として持っておけば、図の描き方に迷っても検算が効く。
苦手を潰す反復サイクル
型を頭に入れても、本番の速度で出せなければ得点にならない。苦手を潰す反復は、次の3手のサイクルで回す。
第一手、誤答した設問を分野ラベル(損益・仕事・速度・確率・集合)で分類する。どの分野で落としているかが見えなければ、対策のしようがない。第二手、同じ分野を固めて連続で解く。分野をまたいでランダムに解くより、一つの分野を集中して回した方が、型が定着しやすい傾向がある。第三手、解いた後に「どの分野で・何手目で・なぜ詰まったか」を棋譜として書き残す。詰まる分野が偏って見えてくれば、そこに反復を集中させればよい。
このサイクルを回すと、苦手だった分野が「見た瞬間に手が動く」得点源へ変わっていく。反復で型を固めたら、あとは本番でそれを出し切るだけである。当日の所作──持ち物・時間配分・退室後の棋譜の残し方──は別稿テストセンター当日の所作 ── 72時間前から退室までに譲る。
対策のまとめ
非言語の苦手は、推論だけの問題ではない。むしろ損益算・仕事算・速度算・確率・集合という推論以外の5分野で、静かに得点を落としていることが多い。これらは知識として難しいわけではなく、型を思い出す速度が足りていないだけのことが少なくない。
だからこそ、分野ごとの定石手筋を反復で体に戻す作業が効く。誤答を分野で分類し、同じ分野を固めて回し、棋譜で詰まりの偏りを見る──この地道なサイクルが、非言語全体の底上げにつながる。5分野を含む頻出パターンの解法と解答をまとめた資料も用意している。分野ごとの手筋を一冊で確認したい場合はこちらから参照できる。
よくある質問
Q. 推論と計算分野(損益算・速度算など)は、どちらを先に対策すべきか
一概には言えないが、まず自分の失点の傾向を把握するのが定石である。過去に解いた問題を分野で分類し、誤答が多い側から着手する。多くの受検者は推論に意識が向きがちなため、計算分野の取りこぼしが盲点になっていることが少なくない。
Q. 損益算や速度算は中学受験の内容と同じか
出題の土台となる考え方は共通する部分が多い。ただしSPIでは1問あたりの持ち時間が短い傾向があるため、公式を思い出す速度と、原価を100と置くような計算を軽くする手筋を持っているかどうかで、かかる時間が変わる。
Q. 確率が特に苦手な場合、どこから手をつければよいか
まず順列と組合せの区別を固めるとよい。「並び順に意味があるか」で場合の数の数え方が変わるため、ここが曖昧なまま確率に進むと土台から崩れる。「少なくとも」を問う設問は、余事象で全体の1から引く手筋を型として持っておくと落ち着いて処理できる。
Q. 集合の問題はベン図と表のどちらで解くべきか
集合が二つならベン図、属性が2軸に分かれるなら2×2の表が扱いやすい傾向がある。どちらを引くにせよ、包除原理(重なりを一度だけ引く)を式で持っておけば、図の描き方に迷っても検算ができる。