SPI 言語 長文読解の定石 ── 設問先読みという一手
SPI言語で受検者の持ち時間を最も削るのが、後半に控える長文読解である。本文を頭から読み切ってから設問に向かう指し方では、二度読み・三度読みが発生し、盤面全体の時間配分が崩れる。本稿では、設問を先に読んでから本文に当たる「設問先読み」を再現可能な定石として整理し、手順と設問タイプ別の手筋まで一段掘り下げる。対象は27卒・28卒の就活生である。
目次
長文読解で持ち時間が崩れる理由
SPIのテストセンターでは、言語は語彙・文法系の短問から始まり、後半で長文読解に入るのが典型的な進行である。長文は1題あたり本文600〜1500字に設問2〜4問が付き、素直に頭から読むと本文だけで2〜3分を消費する。
崩れ方には型がある。
- 本文を通読→設問を見る→根拠箇所を忘れて本文へ戻る(二度読み)
- 設問と無関係な段落まで精読してしまう(読みの過剰投資)
- 一題目に時間を使いすぎ、後続の長文が実質ノータイムになる(時間切れ)
いずれも読解力不足ではなく、読む順番という手順の問題である。手順の問題は定石で解決できる。
設問先読みという一手の中身
設問先読みとは、本文より先に設問文を読み、「本文から何を拾えばよいか」を決めてから読み始める一手である。将棋で言えば、駒を動かす前に詰み筋の候補を立てておく指し方に当たる。
効果は主に二つある。
- 読む目的が定まる:「筆者の主張」を問われていると分かれば、具体例の段落は速度を上げて流せる。
- 二度読みが消える:設問のキーワードを頭に置いて読むため、根拠箇所に当たった時点で解答に入れる。
一題あたり30秒〜1分の短縮が見込めるが、効果には個人差がある。後述の演習で自分の棋譜(解き方の記録)を取り、短縮幅を実測するとよい。
先読み定石の三手順
手順は三つに固定する。迷いを消すのが定石の役目である。
手順1:設問文だけを10秒で読む(選択肢は見ない)
まず設問文のみを読み、「内容一致か」「主旨か」「空欄補充か」のタイプを判定する。選択肢まで読み込むと先入観が入り、かえって誤答を誘うため、この段階では見ない。
手順2:キーワードを2つまでに絞って保持する
設問文中の固有名詞・数字・逆接表現(しかし、一方で)に注目する。テストセンターでは画面上の本文にメモを書き込めないため、「拾うべき語は2つまで」と決めて頭に置くのが実戦的である。
手順3:本文を段落単位で緩急をつけて読む
各段落の冒頭一文で「この段落は設問に関係するか」を判定し、関係が薄ければ速読、キーワードが出たら精読に切り替える。将棋の緩急と同じで、全部を全力で読まないことが手筋である。
設問タイプ別の手筋
- 内容一致(本文と合致するものを選ぶ):選択肢を一つずつ照合するより、本文を読みながら「明らかに反する選択肢」を消す消去法が速い局面が多い。
- 主旨・筆者の主張:根拠は最終段落と逆接の直後に集中する。具体例の段落は流してよい。
- 空欄補充:空欄の前後一文だけ精読すれば足りる場合が大半である。接続詞の問題は、前後の論理関係(順接・逆接・言い換え)の判定に絞る。
- 下線部の言い換え:下線部を含む一文と直前の一文を読み、指示語の中身を確定させてから選択肢に当たる。
演習で定石を手に馴染ませる
定石は知識ではなく手癖である。次の三段階で回すとよい。
- 時間無制限で手順通りに解く(3日程度):速さより、三手順を正確になぞることを優先する。
- 1題4分の持ち時間で解く(1週間程度):時間が切れても途中で指し方を変えないこと。定石が崩れる原因の大半は、焦って通読に戻ることである。
- 本番想定のセット演習:言語全体を通しで解き、長文に入る時点の残り時間を記録する。
非言語側の失点対策は別稿SPI 非言語の「苦手」を潰す定石 ── 推論以外の頻出5分野で整理した。また、玉手箱の論理的読解やTG-WEBの長文とは設問の作りが異なるため、先読みの粒度は形式ごとの調整が必要である。同じ「読解」でも、局面が違えば最善手は変わる。
この三手順を形式別の演習の中で固めたい読者に向けて、玉手箱・SPI(テストセンター)・TG-WEBの3形式に絞って頻出パターンをまとめた「就活定石ノート Webテスト編」(3,980円・税込・買い切り)を用意している。本稿の定石を、実際の出題形式に沿って反復できる。
よくある質問
Q. 本番まで2週間しかない場合でも、長文読解の対策は間に合うか?
手順の習得自体は3〜4日で可能なため、2週間あれば上記の三段階をひと通り回せる。ただし語彙力や速読の地力を底上げする時間はないので、いまある読解力を手順で最大化する方針に絞るのが現実的である。1日2題でも毎日続けることを優先したい。
Q. 自宅受検型(WEBテスティング)のSPIでも設問先読みは有効か?
有効である。自宅受検では手元でメモが取れるため、手順2のキーワードを紙に書き出せる分、テストセンターより先読みの効果が出やすい傾向がある。ただし出題構成が一部異なるため、受検形式が確定してから、その形式に合わせた演習に切り替えるべきである。
Q. 先読みしたのに、本文を読み終える頃には設問を忘れてしまう。どうすればよいか?
保持するキーワードが多すぎるのが典型的な原因である。手順2の通り2つまでに絞り、それでも忘れる場合は、段落を1つ読むごとに設問文へ視線を戻す「二手一組」の指し方に切り替えるとよい。往復のロスより、忘れて全文を読み直すロスの方がはるかに大きい。
Q. 非言語が苦手なので言語は後回しにしたいが、問題ないか?
企業や職種によって言語・非言語の重み付けは異なるとされるため、一概には言えない。ただ、言語の長文読解は対策の効果が出るまでが速い領域である。非言語を主戦場にするとしても、本稿の三手順だけは先に固めておくことを勧める。投資対効果で見れば、完全な後回しは損な一手である。