「みんな使っているのか」を仕分ける定石
「webテスト 解答集 使用率」「割合」で検索窓を埋めたことがあるかもしれない。知恵袋やなんJでも、「実際どれくらいの人が使ってるの」という同じ形の問いが繰り返し立つ。だが検索を重ねても、公式な数字にはたどり着けない。囲碁の盤面には、時に正解の一手が一つに定まらない局面がある──それでも打つ手は決めなければならない。「使用率」という数字が存在しない盤面で、何を判断材料にすればよいのか。本稿では、この問いの周りで繰り返される五つの疑問を整理し、一次情報で答えが出るものと出ないものを仕分けたうえで、数が分からないときの手の選び方を定石として置く。
目次
- #1 使用率の公表値は存在するか
- #2 数として存在するのは何か
- #3 繰り返される問いを五つに整理する
- #4 一次情報で答えが出る問い・出ない問いの仕分け
- #5 「逮捕された人はいるのか」の事実関係だけを置く
- #6 数が分からない盤面での手の選び方
- まとめ
- よくある質問
#1 使用率の公表値は存在するか
結論を先に書く。Webテスト解答集の使用率・利用割合を示す公表された統計は確認できない。 就職情報会社の調査、検査提供元の公表資料、公的機関の統計のいずれを探しても、この数字を裏づける一次情報には行き当たらなかった。
考えてみれば不思議ではない。解答集は運営者情報を請求開示制に留める例も多い個人間・小規模な市場で流通しており(選び方で見た通り、特定商取引法に基づく表記の有無すら購入前に見分けが要る盤面だ)、誰が何人にどの程度使っているかを横断的に集計する主体自体が存在しない。集計する仕組みがない以上、そこから生まれる数字もない。ないものはないと認めるところから、この局面は始まる。
#2 数として存在するのは何か
存在するのは、検索需要という間接的な指標だけである。「webテスト 解答集 使用率」「割合」といった語で検索する人が一定数いること自体は事実として観測できる。だがこの検索需要は、実際に解答集を使っている人の割合とは別の指標だ。
検索需要が高いことは「関心を持つ人が多い」ことを示すに過ぎず、「答えが『はい』である人が多い」ことは意味しない。知恵袋やなんJの投稿数も同じだ。現れるのはわざわざ書き込む人だけの声であって、黙って解いている大多数は現れない。可視化された声の量を、母集団の割合と読み替える手が、この局面で一番踏みやすい悪手である。
#3 繰り返される問いを五つに整理する
「使用率」を軸に検索や掲示板を辿ると、表現は違っても中身が重なる問いに何度も出会う。突き詰めると、次の五つに集約できる。
§A みんな使っているのか──周囲の利用実態を知り、自分の判断の材料にしたいという問い。 §B バレるのか──企業側に解答集の使用が発覚するのではという不安。 §C 逮捕された人はいるのか──解答集がらみで実際に処罰された事例があるかという問い。 §D 正答率は本当か──販売ページの「正答率◯%」といった謳い文句が事実かという問い。 §E 自作は許されるのか──友人と過去問を持ち寄って自分たちで作るのは問題ないかという問い。
五つとも、根っこにあるのは同じ不安だ。自分だけが知らない基準で損をしたくない、という気持ちである。だが五つを同じ強さで悩む必要はない。次の章で、それぞれに一次情報が存在するかどうかを仕分ける。
#4 一次情報で答えが出る問い・出ない問いの仕分け
五つの問いを、一次情報の所在と答えが出るかどうかで並べると、次のようになる。
| 問い | 一次情報の所在 | 答えが出るか |
|---|---|---|
| §A みんな使っているのか | 使用率・利用割合を示す公表統計は見当たらない | 出ない |
| §B バレるのか | SPI3公式サイトの不正行為防止の取り組み | 一部出る |
| §C 逮捕された人はいるのか | 日本経済新聞の報道(罪名・量刑の一次情報)。Authense法律事務所の解説は法律事務所による二次的な整理 | 出る |
| §D 正答率は本当か | 販売者の自己申告以外に第三者が検証できる一次情報がない | 出ない |
| §E 自作は許されるのか | 公的な一次情報はなく、他社の解説記事が独自に説明しているに留まる | 出ない |
§Aと§Dは、そもそも参照すべき一次情報が存在しない。誰かの体感や噂話しか材料がない問いは、一次情報の側から答えを出しようがない──調べ方が足りないのではなく、盤面にその数字自体が置かれていないという構造の問題である。§Eも、「自作・友人との共同作成は問題ないと説明する解説記事」がネット上に存在するのは事実だが、それは特定の事業者の見解であって、公的機関や検査提供元が示した一次情報ではない。
§Bには一次情報が存在する。SPI3公式サイトは2022年11月29日付で「適性検査SPI3の受検時における不正行為防止の取組み」という情報を公開しており、テストセンターのリアル会場では本人確認書類の確認・私物のロッカー保管・監督員による巡回、オンライン会場ではWebカメラを使った監督員によるリアルタイム監視、WEBテスティングでは中断・再開時に同じ問題を出題しないシステム仕様などが明記されている。ただし想定されているのは「本人以外が回答するなどの不正行為」であり、事前に用意した解答集を参照しながら本人が解答するケースの検知方法まで踏み込んで書かれてはいない。体制の存在は一次情報で確認できるが、解答集の利用そのものがどう見分けられるかまでは分からない。「一部出る」と置いたのはそのためだ。
§Cについては次章で事実関係だけを整理する。
#5 「逮捕された人はいるのか」の事実関係だけを置く
日本経済新聞の報道によれば、関西電力の元社員だった男性(28)が2019年3月頃から就職活動生に代わってオンライン適性検査を受ける請負を始め、2020年11月から2022年7月にかけて約300人分・複数企業の検査を代行して400万円超を得ていたとして私電磁的記録不正作出・同供用の罪に問われ、懲役2年6月・執行猶予4年の判決を受けた。Authense法律事務所のコラム(2022年11月25日付)は、この種の替え玉受検が私電磁的記録不正作出罪にあたりうる構成要件を解説したうえで、替え玉受検を依頼した就活生についても「同じ被疑事実で、検察庁に事件送致されています」と記している。
事実関係として確認できるのはここまでである。これは他人が代わりに受検した替え玉受検の事例であり、解答集を参照しながら本人が受検した行為とは別種の話だ。解答集の使用そのものを理由に立件された事例の報道・公的な注意喚起は、本稿の調査範囲では確認できていない。この一件を解答集の使用にそのまま重ねて読むのは早計である。
#6 数が分からない盤面での手の選び方
ここまでの仕分けを一言でまとめると、定石はこうなる。多数の動向は形勢判断の材料にならない。判断材料になるのは、自分が確かめられる一次情報だけである。
「みんな使っているのか」に答えが出ないのは、調べ方が甘いからではない。そもそもその数字を集計し公表する主体が存在しないからだ。存在しない数字を追いかけても、盤面は動かない。知恵袋の回答数やなんJのレスの勢いは、声の大きさを映す鏡であって、実態の縮図ではない。
だからこそ判断の軸を「みんなどうしているか」から「自分は何を確認できるか」に移す。§Bのように答えが半分しか出ない問いなら、分かる範囲とそうでない範囲を分けて受け止める。§Cのように事実関係が判明している問いなら、その事実がどの行為に対応するかを正確に読む──替え玉受検の判例を、解答集の使用一般にまで拡大して読まない。§A・§D・§Eのように一次情報が存在しない問いなら、答えが出ないという結論を受け入れて次に進む。分からないことを分からないままにしておく方が、根拠のない数字で安心するより堅い一手になる。
解答集の選び方は選び方の6つの視点に、価格差の構造はコスパの定石に、無料配布のリスクはタダの解答集は手筋か罠かに整理している。当サイトの位置づけと向き不向きの全体像はWebテスト解答集の定石にまとめている。
まとめ
「Webテスト解答集 使用率」で検索しても、公表された統計は出てこない。それは調べ方の問題ではなく、そもそも集計され公表される数字が存在しないという構造の問題だ。知恵袋やなんJで繰り返される五つの問い──使用実態・発覚可能性・処罰事例・正答率の真偽・自作の可否──のうち、一次情報で答えが出るのは発覚可能性の一部と処罰事例の事実関係だけであり、残りは答えが出ないことを認めるほかない。数が分からない盤面では、多数の動向ではなく、自分が確認できる一次情報だけを判断材料にする。それが、正解の数字が存在しない局面での定石である。
よくある質問
Q. 「Webテスト解答集 使用率」で検索しても数字が出てこないのはなぜか
集計・公表する主体が存在しないからである。就職情報会社の調査、検査提供元の公表資料、公的機関の統計のいずれにも、解答集の使用率や利用割合を示す一次情報は見当たらなかった。存在しない数字は、どれだけ検索しても出てこない。
Q. 知恵袋やなんJの回答はどこまで参考にしてよいか
実態の縮図としてではなく、関心の傾向を映す間接的な指標として読むのが実際的である。書き込みをするのはわざわざ発言する一部の人であり、就活生全体を代表する標本ではない。回答の多さや勢いを、実際の利用割合と読み替えないようにしたい。
Q. 「正答率◯%」のような表示はどう受け止めればよいか
第三者が検証できる一次情報が伴わない数字は、販売者の自己申告以上のものではないと捉えておくのが安全である。数字そのものの真偽を外部から確かめる手段がない以上、その表示だけを根拠に商材を選ぶのは避け、選び方の6つの視点のような、値段以外の具体的な基準と合わせて見た方がよい。
Q. 解答集がらみで逮捕された事例と聞いたが、詳しく知りたい
報道で確認できるのは、就活生本人に代わって第三者がオンライン適性検査を受けた替え玉受検の事例であり、私電磁的記録不正作出罪などに問われている。これは解答集を参照しながら本人が受検する行為とは別種の話であり、解答集の使用そのものを理由に立件された事例は本稿の調査範囲では確認できていない。両者を同一視せず、事実関係を分けて捉えることが大切である。